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ロレックスのトゥールビヨンはなぜない?カスタムモデルの真実

 

「ロレックスにトゥールビヨンは存在するの?」と検索してこの記事にたどり着いた方は、きっと同じ疑問を抱えているんじゃないかなと思います。

世界で最も有名な時計ブランドのひとつであるロレックスが、なぜトゥールビヨンという時計の最高峰技術を採用しないのか。

調べてみると、そこにはロレックスならではの明確なブランド哲学があることがわかりました。

そして同時に、カスタムメーカーの手によって、ロレックスのミルガウスにトゥールビヨンを搭載した驚くべき一本が実際に存在することも知りました。

この記事では、トゥールビヨンの仕組みや価格が高額になる理由から、ラベルノワールが手掛けたカスタムモデルの詳細、オーデマピゲをはじめとする他ブランドの取り組みとの比較まで、ロレックスとトゥールビヨンにまつわるあらゆる疑問に答えていきます。

ジャンピングトゥールビヨンという特殊な機構が使われた背景や、カスタムウォッチならではのリスクと魅力についても、できるだけわかりやすく整理しましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。

記事のポイント
  • 1ロレックスがトゥールビヨンを作らない理由とブランド哲学
  • 2ラベルノワールによるカスタムモデルの仕組みと実態
  • 3オーデマピゲなど他ブランドのトゥールビヨン技術との違い
  • 4トゥールビヨン時計の価格が高額になる理由と相場感

ロレックスのトゥールビヨンが存在しない理由と背景

そもそもなぜロレックスはトゥールビヨンを作らないのか。この疑問に答えるには、まずトゥールビヨンという機構そのものへの理解と、ロレックスが長年貫いてきたブランドの思想を知ることが大切です。

このセクションでは、トゥールビヨン時計の仕組みから始まり、ロレックスがあえてこの複雑機構を手掛けない理由、そしてカスタムメーカーが生み出したミルガウスをベースにした特別な一本の詳細まで、順を追って解説していきます。

トゥールビヨン時計の仕組みと誕生の歴史

トゥールビヨンとは、機械式時計が持つ構造的な弱点、すなわち重力による精度への影響を補正するために生み出された、極めて精巧な複雑機構です。

フランス語で「渦」を意味するこの言葉は、1801年に天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲが特許を取得したことで時計の歴史に刻まれました。

機械式時計の心臓部であるテンプ(振り子に相当する部品)やアンクル、ガンギ車といった脱進機全体を、「キャリッジ」と呼ばれる回転するケージの中に収納し、一定の周期(多くは1分間に1回転)で回転させることで、特定方向からかかり続ける重力の影響を360度に分散させるのがその仕組みです。

この構造によって、時計の姿勢が変わるたびに生じていた精度の誤差(姿勢差)を大きく低減できるとされています。

現在では世界三大複雑機構のひとつに数えられ、ミニッツリピーターやパーペチュアルカレンダーと並んで、時計師の技術力を示す究極の証として位置づけられています。

その製造には、1グラムにも満たない極小部品を数十個組み上げる卓越した技術が必要であり、ブレゲが発明して以来200年以上にわたって、時計製造の最高峰を象徴し続けてきた機構です。

ロレックスがトゥールビヨンを作らない理由とは

ロレックスの公式ラインナップには、現在もトゥールビヨン搭載モデルが存在しません。

これは技術力の問題ではなく、ロレックスというブランドが長年にわたって貫いてきた「実用性」と「堅牢性」を最優先とする哲学の表れだと私は思っています。

ロレックスは時計を単なる装飾品ではなく、どんな環境下でも正確に機能するツールとして設計し続けてきたブランドです。

実際、ムーブメントを裏面から観賞できるシースルーバックをロレックスが採用しないのも、防水性と耐衝撃性を最大限に確保するためであり、この姿勢にブランドの本質がよく表れています。

一方でトゥールビヨンは、その精巧さゆえに衝撃に対してとても繊細な機構でもあります。

製造コストやメンテナンスの複雑さが跳ね上がることも含め、ロレックスの視点からすれば「堅牢で信頼できる時計」という命題とは相性が良くないと判断しているのかもしれません。

なお、ロレックス公式サイトでも複雑機構に関する技術開発方針は明確に公表されていますので、興味がある方はあわせてご確認ください。(参考:出典:ロレックス公式「時計製造」

ミルガウスをベースにしたカスタムの誕生経緯

ロレックスが公式にトゥールビヨンを手掛けない一方で、カスタムウォッチの世界では「ロレックスにトゥールビヨンを搭載する」という前代未聞の試みが実現していました。

2011年にスイスで設立されたカスタムメーカー、ラベルノワール(Label Noir)が、匿名のクライアントの依頼を受けて製作したミルガウス(Ref. 116400GV)のカスタムモデルがそれです。

ミルガウスは、強力な磁場にさらされる環境で働く科学者や研究者のために開発された、ロレックスの中でも個性的なモデルで、2023年に惜しくも生産終了となっています。

稲妻型のオレンジ色の秒針やグリーンサファイアクリスタルといったユニークなデザインが特徴で、カスタムのベースとして魅力的な素材だったのでしょう。

このモデルを出発点に、ラベルノワールはケースの外装から内部の心臓部であるムーブメントまで、大胆な改造を施していきます。

ロレックスの歴史上、初めてトゥールビヨンが搭載されたこの一本は、時計業界に大きな衝撃をもたらしました。

ラベルノワールによるジャンピングトゥールビヨンの搭載技術

このカスタムモデルで最も驚くべき点は、搭載されたトゥールビヨンが通常のものではなく、ジャンピングトゥールビヨンと呼ばれる特殊な機構であった点です。

ジャンピングトゥールビヨンとは、一般的なトゥールビヨンがケージを等速で滑らかに回転させるのに対し、秒ごとにカクカクと刻みながら回転するタイプのものを指します。

この動きは視覚的にもインパクトが強く、時計の動きをよりドラマチックに演出する効果があります。

ラベルノワールは、ロレックス純正の自動巻きムーブメントであるキャリバー3131をベースに、51個のパーツを取り外し、新たに94個もの新規部品を追加するという大がかりな改造を行いました。

さらに、ムーブメントの振動数をオリジナルの毎時28,800振動(4Hz)から毎時21,600振動(3Hz)へと変更することで、トゥールビヨンのケージが安定して回転できる環境を作り上げています。

重要なのは、ロレックスのオリジナルムーブメントを載せ替えるのではなく、あくまでもベースとして活用している点で、これによりシリアルナンバーが維持され、本物のロレックスである証明が保たれているのです。

ラベルノワールのようなサードパーティによるカスタムは、メーカー非公式の改造です。一度手を加えた時計はロレックスの正規保証の対象外となる可能性が高く、正規サービスセンターでの修理やメンテナンスを断られるケースもあります。カスタムモデルの購入や改造を検討する場合は、こうしたリスクを十分に理解したうえで、必要に応じて専門家にご相談ください。

トゥールビヨン時計の価格が高額になる理由

トゥールビヨン搭載モデルの価格は、なぜあれほどまでに高額になるのでしょうか。

その理由は大きく分けて、部品の極小さと構造の複雑さ、そして熟練した時計師の技術と膨大な製造時間の2点に集約されます。

まず構造面の話をすると、トゥールビヨンのキャリッジを構成する部品は数十個にのぼり、その総重量は一般的に1グラムにも満たないとされています。

これらの部品をミクロン単位の精度で加工し、一つひとつ手作業で組み立てるには、最先端の工作機械と長年の経験を積んだ熟練した職人の技術が不可欠です。

次に時間のコストですが、トゥールビヨンひとつのバランス調整だけで、一人の時計師が数週間から数ヶ月を費やすことも珍しくありません。

これらの要素が積み重なることで、トゥールビヨン搭載モデルの価格は数百万円から数千万円、場合によっては億を超えるものまで存在します。

数値はあくまで一般的な目安であり、ブランドやモデルによって大きく異なります。最新の価格情報はメーカーや正規販売店の公式サイトでご確認ください。

ラベルノワールがカスタムしたミルガウスのトゥールビヨンモデルは、ベースとなるロレックス本体の価格に加え、ラベルノワールへのカスタム費用が上乗せされるため、入手には相当な費用が必要とされています。受注生産・限定対応であるため、正確な価格については直接問い合わせが必要です。正確な情報はラベルノワールの公式サイトをご確認ください。

ロレックスのトゥールビヨンを他ブランドと比較して考える

ロレックスがトゥールビヨンを手掛けない理由と、カスタムによって生まれた唯一の存在についてみてきましたが、この機構を積極的に展開している他のブランドと比較することで、ロレックスの立ち位置がより明確に見えてきます。

このセクションでは、トゥールビヨンの世界で高い評価を得るオーデマピゲ、ロレックスを代表する複雑機構モデルとしてのミルガウスの特性、そしてカスタム文化全体のトレンドについて、FPとして資産性も含めた視点でお伝えします。

トゥールビヨンのオーデマピゲとロレックスの思想の違い

トゥールビヨンといえば、スイスの名門ブランドであるオーデマピゲを外すことはできません。

1986年、オーデマピゲは世界で初めて自動巻き機構を組み合わせたトゥールビヨン腕時計を発表し、それまで手巻きが前提だったこの繊細な機構に革命をもたらしました。

代表作の「ロイヤルオーク」コレクションにもトゥールビヨン搭載モデルが複数ラインナップされており、スポーティーで大胆な外観と超精巧な内部機構を共存させるスタイルが大きな人気を誇っています。

ロレックスが「どんな環境でも信頼できる道具」としての時計を追求してきたのとは対照的に、オーデマピゲは「時計製造の芸術と技術の極限を体現するもの」としての時計に情熱を注いできたブランドだと言えます。

どちらが正解というわけではなく、両者は高級時計という世界の中で、それぞれ異なる頂点を目指しているのが面白いところです。

トゥールビヨンのオーデマピゲが示す世界を知ることで、ロレックスがいかに独自の哲学を貫いてきたかが、よりくっきりと浮かび上がります。

ミルガウス生産終了後の中古市場と資産価値

今回のカスタムのベースとなったミルガウスは、2023年に惜しまれながら生産終了となったモデルです。

生産終了後の高級時計は、希少性が高まることで中古市場での価格が上昇するケースが多く、ミルガウスも例外ではありません。

特に、Ref. 116400GVのグリーンサファイアクリスタル仕様は廃盤直後から中古相場が動いており、定価以上で取引されているケースも見受けられます。

さらにラベルノワールのカスタムが施されたトゥールビヨンモデルは、世界に数本しか存在しない超希少品であるため、その希少性ゆえに通常のミルガウスとは全く異なる次元での価値評価がなされる可能性があります。

ただし、メーカー非公認のカスタムが施された時計の資産価値は、正規品とは異なる評価基準で判断されることが一般的です。

購入や売却を検討する際は、専門の時計鑑定士や買取業者など、信頼できる専門家にご相談されることを強くおすすめします。

ミルガウスの生産終了と中古相場のポイント

ミルガウスは2023年に廃盤となり、新品の正規流通はすでに終了しています。中古相場は時期や状態によって大きく変動しますので、数値はあくまでも参考程度とご理解ください。最新の相場情報は、信頼できる専門の買取・販売業者や時計専門メディアでご確認ください。最終的な売買判断は、専門家へのご相談をおすすめします。

カスタムウォッチのトレンドと高級時計文化の変化

ラベルノワールのような取り組みは、近年の高級時計業界における「カスタムウォッチ」というトレンドの象徴でもあります。

かつては既存のモデルに大きく手を加えることはタブー視されていた部分もありましたが、現在ではBamford Watch DepartmentがLVMHグループの公認パートナーとして活動するなど、ブランド公認のカスタムという新たな市場が生まれています。

ロレックスはカスタムのベースとして人気が高く、ケースコーティングや文字盤変更からムーブメント改造まで、さまざまなカスタムが世界中で施されています。

ただし、こうしたカスタムはブランドの正規保証を失うリスクを伴う点は忘れてはいけません。

高価な時計に手を加える前には、保証の有無、メンテナンスの受付先、資産価値への影響などを十分に調べ、信頼できる専門家に相談することが大切です。

ロレックスのトゥールビヨンから見えるブランドの未来

では、今後ロレックスが正式にトゥールビヨンを発表する可能性はあるのでしょうか。

個人的な見方では、現時点でその可能性は非常に低いと思っています。

ロレックスは数十年にわたって「実用的で信頼できる時計」という一貫したブランドイメージを守り続けており、その哲学を覆すような製品展開はブランドのアイデンティティを揺るがしかねません。

一方で、時計業界全体ではトゥールビヨンをはじめとする複雑機構への需要がますます高まっており、コレクターや投資家の関心も年々強くなっています。

ロレックスが得意とするムーブメントの精度追求や素材技術の進化が、今後どこに向かうのかは非常に興味深いテーマです。

少なくとも、カスタムという形でロレックスとトゥールビヨンが融合した前例が生まれたことは、時計の可能性を広げる象徴的な出来事として、時計史に残り続けるだろうと感じています。

ロレックスのトゥールビヨンに関するまとめ

この記事では、ロレックスにトゥールビヨンが存在しない理由と、カスタムによって生まれた唯一の例について、さまざまな角度から整理してきました。

最後に重要なポイントをまとめておきます。

ロレックスが公式にトゥールビヨンを製造しないのは、実用性・堅牢性・信頼性を最優先とするブランド哲学によるものです。

ただし、ラベルノワールによってミルガウスをベースにしたカスタムモデルが存在し、ジャンピングトゥールビヨンを搭載したロレックスとして世界に数本のみが現存しています。

オーデマピゲに代表されるブランドがトゥールビヨンを技術の象徴として展開する一方、ロレックスはあくまでもクロノグラフ機能を持つデイトナのような実用的な複雑機構の追求を選び続けています。

トゥールビヨン時計は価格も高く、資産としての側面もありますが、カスタムモデルについては正規品とは異なるリスクがある点を忘れないでください。

購入や売却を検討する際は、必ず専門家にご相談のうえ、最終的なご判断はご自身の責任でお願いします。

ロレックスのトゥールビヨンをめぐる話は、時計というものが単なる道具を超えた文化・芸術・投資対象であることを改めて教えてくれます。

引き続き、時計の世界の深さと面白さをこのブログでお届けしていきます。

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ロレックスをはじめとする高級時計を10年以上愛好。正規店攻略から買取まで実体験をもとに情報発信。

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